今回は最近読んだ本、「漢字の使い分けときあかし辞典」を読んでみた記事です。
パソコンやスマートフォンで予測変換で漢字が表示される時に"あれ?どの漢字を使えばいいんだろう?"、"この漢字であっているのかな…?"という心のモヤモヤが解消されるので、机に置いておきたい本の一つになりました。
読んだきっかけ
私の本業はDTPオペレータをしているのですが、先日文章の確認中に「空に"かける"橋」という言葉がでてきて、その時は”架ける”が使われていました。
(あれ?かけるって架けるだったっけ…?)
と思っていた時にTwitterでこの本を紹介しているツイートを発見。すぐに買ってしまいました。
本の中身
- 漢字の意味から説き起こされていることや使い分けのポイントが書かれているので、読み物としても読める丁寧な説明
- 約7700個の用例
- 文字だけでなく図表もあるので直感的に理解できる
タイトルに"辞典"と入っているとおり同じ訓読みをする漢字、同訓異字の使い分けが五十音順に記載されています。
自分でも使い分けをときあかしてみました
先ほどの「空に"かける"橋」で”架ける”が使われていた話。
自分の中では"掛ける"、または"懸ける"が使われるのかと予想していましたが
この辞書の最初の使い分けポイントは
- 多くの場合は《掛》を用いるが、かな書きの方が落ち着くことも多い
- ものごとの先行きや気持ちなどが不安定な場合には、《懸》を使うことが多い
- 橋などを水平方向に渡す場合には《架》
と、まとめられています。
そこから一字ずつの解説が書かれていて、
《掛》
《掛》は本来、"もののとがった部分に何かをぶら下げる"という意味だと考えられる。
例文として
と書かれています。
また、
"上から覆う"で「寝ている子供に毛布を掛ける」、"まわりから覆う"で「文庫本にカバーを掛ける」、という意味になったり"上に置く"ことを指したりで「やかんを火に掛ける」ともする。
また、転じて、
"あるものが別のものに作用や影響を及ぼす"という意味から「アイロンを掛ける」、「声を掛ける」。
「取り掛かる」では"作業や影響を及ぼし始める"という意味になり、ここから「やり掛けの仕事」のように"行っている途中である"ことをも表す。
例を挙げるときりがないが、守備範囲が多いのが《掛》。かな書きする方が落ち着く場合もあるとのこと。
《懸》
《掛》と《懸》の基本的な違いは《掛》は"上からぶら下がる"ことを表すのに対して《懸》は"下が固定されていない"ところに重点がある点。ここから《懸》は"不安定である"というイメージで使われる。
例文
「懸賞」では、その賞がだれのものになるかが"不安定"。ここから「犯人逮捕につながる情報に賞金を懸ける」、「全国大会出場の懸かった試合」のように用いられる。
他の意味で
"下"に重心を置く《懸》は、見上げるような視点を持つため、"高さ"を強調するはたらきがある。「夜空に満月が懸かっている」のように"はるかに高い"ことを表すのがその例である
《架》
《架》は、「道路を高架にする」のように使われる漢字で、"何かと何かの間の空中を、もので横につなぐ/ものが横につないでいる"という意味。
例文
「海を渡る橋を架ける」、「電柱から住宅へと電線が架かっている」のように用いられる
気になっていた架け橋についても書かれていて
《架》を使うのが基本だが、丸太橋のように素朴でやや"不安定"なものや、吊り橋のように"高さ"のあるものは、「懸け橋」とも書く。
そこで、「両国をつなぐ架け橋となる人材を育てる」のような場合には、不安定さの少ない《架》がおすすめ。
逆に、「虹が懸かる」では、《懸》を使う方が"はかなさ"や"高さ"が表現できる。もっとも「虹が架かる」と書いても間違いではない。
つまり
「空に"かける"橋」は"不安定ではるかに高いことを表す"「懸ける」でも、橋という横方向につなぐことから「架ける」でも意味的にはどちらを使ってもよいということのようです。(結局仕事ではそのまま"架ける"が使われました。)
一部説明を短くしていますが、例文が多いのでどの字を使えばいいか判断や理解がしやすいです。
漢字を見るたびに「この字にはこの漢字を使うのかな…?」と、気にして一回一回迷っていましたが、この本のおかげで心のモヤモヤが少し晴れました。
助言が欲しい時に頼りになる本です。